【レポート】即興学ぼうず・押谷祥太、 雪かき道場で学ぼうず 前篇

文章:押谷祥太(即興学ぼうず) 写真:瀬尾泰章

僕が「雪」を意識したのは、あの日だろう。
そう、即興で紙の雪を降らせた、あの日

それ以来、雪に興味を持った。

そして、雪の博士・諸橋和行教授の活動の一つである「雪かき道場」に参加した。ほんと、学ぶ事は多かった。2泊3日という、長期に渡る経験だったのである。

《基本の重要性・型にはめない》

東京から出発し、渋滞を経て、6時間かけて到着した木沢の雪かき道場。そこでまず学んだのは、かんじき・スコップ・スノーダンプ、雪かきの三種の神器の扱い方の講習会である。

早々に雪かきをやらされると思っていたのだが、今考えてみれば当たり前だ。前回も学んだ「基本の重要性」。今回も再認識することとなったが、今回は突っ込んだ話をしよう。

基本とは何か?どこまでが基本で、どこからが応用なのかは人によって基準が曖昧なものである。だが、今回は自分なりに定義を見つけることができた。基本とは、安全・安定をつくるために学ぶものである。

例えば、今回の講習会は、安全に、身体を痛めないように作業するために行われた。ここで重要なのは、それ以上のことは一切教えないこと、型にはめない指導である。

日本はマニュアル社会で、特に教育においてはその傾向が強い。皆マニュアルに従って生きているために個性を発揮できない、過去よりいいものが生まれない。そんな社会に対して投じることができるような講習会だったとは言い過ぎだろうか。



 
 
 
《ゲーム性・安全な場》

雪かき道場の皆さんには愛があった。雪かきを楽しんでもらおう、いい思い出をつくってもらおう、また来たいと思ってもらおう…。愛があったからこそ、雪かき道場の隅々に工夫が凝らしてあった。その中で取り上げたいものが一つ、雪かきにゲーム性を導入したことである。

講習会の実践にて、チームごとに分かれて雪を集めるというゲームをやり、一番高く積み上げたチームが勝ちというものだ。別に勝っても何かあるわけでもないし、負けても罰があるわけでもない。しかし、ゲームをしている時の参加者の表情は何とも輝かしかった。ゲームの重要なポイントは、遊びの中に競争があることである。競争心は人間誰にでも芽生えるものである 。それゆえに、人よりも努力したり、時には人を蹴落としたりもする。

これは本能的なものであるため、うまく使わないと場が崩壊することもある。例えば、仕事場における会議。よりよい意見を出そうと皆必死になるだろうが、大抵うまくいかない。なぜなら、それ相応の場が創られていないからだ。それ相応の場とは何か?それは、安全な場である。ダメでもいい、失敗してもいい…。そういった雰囲気がない場ではいい競争が出来ない。権威のある人の意見がまかり通り、強い人はどんどん強くなり、弱い人はどんどん弱くなる。

そういった意味でゲーム性があることは非常に有意義なのだ。
なんでもあり、ふざけあえる、ただし基本はしっかり。


 

《距離と愛》

初日の雪かきを終えて。夜は地元の人達と参加者で交流会という名の飲み会が行われた。参加者は老若男女様々だったが、共通していたのは表情の輝きである誰も義務感で参加しているわけではなく、ただ興味があったから参加した人達ばかり。やはり、やりたいことをやっている人というのは生き生きしているなあと再確認した。だが僕が驚いたのは、それにも負けじと輝いている地元の人達。これは正直不思議だった。

僕らにとっては新鮮な雪かき。だが、地元の人達にとっては仕事の一環。決して楽な作業ではない。それでもここまで生き生きして楽しそうなのはなぜだろうか。僕なりに解釈してみたが、これが人の輪というものなのだろう。地元の人達の コミュニケーションを見てても、僕ら都会人のコミュニケーションとはまるで違う。距離感を感じないのだ。実際に会話の時の距離を見ても、普段の感覚よりも大分近い。愛があったと先述したが、まさにその通り。距離と愛は比例する。

 

 
 
《恐怖には慣れる・自信を持つ》

ここでちょっと個人の話に移ろう。雪かき道場の師範に阿部さんという方がいらっしゃった。60歳くらいのおじさんなのだが、普段やってる仕事が凄かった。鉄塔に登って仕事をしているらしいのだが、電線を蔦って隣の鉄塔に移動するなど死と隣り合わせのこともやっているのだ。

まあ、普通はそんなことやらないらしいが、本人曰く「そのほうが早いからやってる」とのこと。そんなことして恐くないのかと尋ねたところ「恐いが、そういう仕事だから」と答えた。やはり恐怖には慣れるしかなく、なおかつ自分のやっていることに誇りをもたなくてはいけない。どれだけ安全な場を提供しても、個々人が自信を もって挑戦しなければ意味がない。まあ、阿部さんの場合、命綱もないから安全とは言えないが。



  
 
《改めて基本の重要性》

引き続き阿部さんの話。阿部さんはこうとも話してくれた。

「恐いが、手順を間違えなければ大丈夫」

よくもまあ、そんなことを平然と言ってのけるものだ。さすが半世紀は鉄塔に登り続けているだけある。圧倒的な経験と自信があってこその言葉だろうと思った。だが、裏を返せば「基本をしっかり身につけよ」とも聞こえる。基本に始まり、基本に終わる。何事も最終的にシンプルなところに辿りつくような気がする。



 
 
※前編は以上です。次回は雪かき道場2日目以降に学んだことを中心に書いていきます。

文章:押谷祥太(即興学ぼうず) 写真:瀬尾泰章

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written by

ウラハラ藝大代表 Photographer | 写真家

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